小屋の家

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東京郊外の海沿いの崖地に住宅を建てたいというクライアントが現れた。西南側に大きく開け、海が見渡せる絶好の土地だった。東京都心部の建て込んだ場所と違って、のびのびと検討ができそうだと感じた。ところがいざ検討を始めてみると、さまざまな制約があった。急な傾斜地、かつ地下水が心配な土地である。また背面の住宅の眺望への配慮から、できるだけ高さを抑えることも求められた。

厳しい制約に対して最大値を取るように設計を行うと、制約のありようを可視化したような、他律的な住宅になる。制約から離れた自律的な建築はかたちが明快だが、コンテクストから離れてしまう。自律的であり他律的でもあるような現れ方を私なりに求めていた。

あまり高さも取れないなら、1階は土留めを兼ねたコンクリートの基壇にガレージとベッドルームを収め、2階部分に木造の小屋を載せることにした。緩い勾配屋根を掛け、鉄骨の細い柱で中心を支え、フルハイトの開口を西南側に設けた。2階の間仕切りは途中までとし、小屋の上部に換気扇を設け、下から上への空気の流れをつくろうとした。

海側は寄棟、山側は切り妻で、両者でまったく異なる表情をもっているのがいいと思った。妻面はもう少し高さが稼げたらより「家」らしいかたちになるのだが、ここでは我慢するしかなかった。基壇の上に建つ小屋のような表情をしていたから「小屋の家」と名付けた。山側から見ると山小屋のようであり、海側から見ると海小屋のようでもある。

Project Date: 2011.10.01

所在地:神奈川県横須賀市
竣工:2011年10月
用途:住宅
構造:木造在来工法、鉄筋コンクリート造
規模:地上2階
最高の高さ:6,318mm
敷地面積:156.12㎡
建築面積:61.54㎡
延床面積:97.06㎡

写真: 太田拓実

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