Project Date: 2022.02.01
所在地:埼玉県所沢市
竣工:2022年2月
用途:住宅・ワーキングスペース・シェアキッチン
構造:木造
規模:地上2階
敷地面積:188.00㎡
建築面積:68.16㎡
延床面積:116.49㎡
写真永井杏奈
設計者の母の「まちづくりのため住宅を改修し地域の女性を支援したい」という意思を受け、東京郊外のニュータウンの第1種低層住居専用地域にある住宅の一部に住民がシェアできる機能(ワーキングスペース・シェアキッチン)を導入することで地域の課題を解決する拠点をつくるプロジェクトである。外壁の塗装は既存の躯体に使用されていた設備と樹木などと色相を調和することで環境の一体感を作っている。
Project Date: 2021.03.01
所在地:福岡県朝倉郡東峰村
竣工:2021年3月
用途:宿泊施設
構造:RC造
規模:地上2階
敷地面積:2978.33㎡
建築面積:2293.35㎡
延床面積:3092.78㎡
写真高野ユリカ
福岡県の東峰村に建つ旧小石原小学校を研修施設と宿泊施設、レストランへ用途変更し再生したプロジェクトである。普通教室を2等分ないし3等分し宿泊室に、音楽室をスイートルームに、給食室をレストランに、というように、学校の雰囲気を最大限生かすよう配慮した。ファサードは形を変えず、中央部のみ土をイメージした色に着彩した。
Project Date: 2020.12.01
所在地:福岡県福岡市 竣工:2020年12月 用途:駐車場 延床面積:255.48㎡
写真長谷川建太
福岡市内の小学校跡地に整備されたグラウンドに駐車場とトイレ、渡り廊下の3つの建築を整備するプロジェクトである。駐車場の屋根は3台の大型バスを収容するために天井高さ4.5m、幅12mの無柱空間が求められ、50mm角の鉄パイプ等を格子上に組み、構造解析結果により段数を変化させることで、薄い厚み(最大t=300mm)で12mスパンを実現している。また全体の形状は水勾配をとるため、長手方向に薄く湾曲させた。渡り廊下も50mm角の鉄パイプを用い、2mの立方体を基礎単位として梁を梯子状に組み、柱を4mおきに交互に配置した。トイレ棟は壁ならびに屋根とも50mm角の鉄パイプを500mmごとに並べて支え、そこに外壁材を留めただけの簡素なディテールを採用した。
Project Date: 2020.02.01
所在地:東京都港区 竣工:2020年2月 用途:物販店
写真長谷川健太
書籍の販売だけでなくセミナーやイベントの開催や雑貨の販売など書店の可能性を拡張するプロジェクトである。書店に空間的な熱狂をもたらす棚の構成に着目し、視線の先に様々な本との出会いをもたらす立体的な「茶色い」棚と書影がつくる長さ28mのひとつながりの「白い」棚によって書店全体を情報と出会い、発信する装置として再定義する。
(藤村龍至+松島潤平+藤井亮介/TEAM ROUNDABOUTとして共同設計)
Project Date: 2019.11.12
所在地:埼玉県比企郡鳩山町
竣工:2019年3月
用途:シェアハウス
構造:木造
規模:地上2階
敷地面積:182.85㎡
建築面積:58.6㎡
延床面積:99.8.㎡
高齢化率50%を超える東京郊外のニュータウンで、空き家を学生向けシェアハウスへ改修するプロジェクトである。町から委託され、RFAは空き家を探し、オーナーとの交渉と改修設計を行い、竣工後も運営を行っている。ここでは日本の住宅地でよくみられる軸組工法による木造住宅は構造の自由度が高いことを利用して、構造家・木下洋介氏のアドバイスをもとに一部の構造を補強した上で内部の壁、階段、キッチンなどを積極的に移設することにした。4つのベッドルームは同じ大きさに再構成され、メインベッドルームのみに接続していた2階のテラスは共用の動線に接続され、階段は1階のダイニングとリビングを仕切る位置に設けられ2階からの光を導く。既存の壁紙はそのまま使われ、新設した壁は石膏ボードのまま仕上げとした。
Project Date: 2019.10.01
所在地:福岡県八女郡広川町 竣工:2019年10月 用途:保育所 延床面積:150.78㎡
写真太田拓実
福岡県広川町に建つ幼稚園の企業内保育園である。105mm角材で統一した柱・梁・ブレースを用いて1,820mmスパンのグリットによる木造軸組の連続体として構成した。断面を連続的に変化させることで保育室と多目的室、屋根と軒、エントランスや設備スペースなどを生み出す、木造建築の現代的なあり方を探求した。
Project Date: 2019.04.01
所在地:東京都品川区
竣工:2019年4月
用途:物販店舗
構造:鉄骨造
規模:地上1階
敷地面積:248.15㎡
建築面積:193.75㎡
延床面積:177.03㎡
写真太田拓実
Project Date: 2019.03.01
所在地:千葉県千葉市
竣工:2019年3月
用途:保育園
構造:木造
規模:地上2階
敷地面積:1243.99㎡
建築面積:400.80㎡
延床面積:665.12㎡
写真太田拓実
千葉市の住宅地に立つ保育園である。市の保育園の老朽化に伴い、民間への整備・運営委託事業として新しく建て替えが計画された。園庭を広く確保し、南側に寄せたシンプルで機能的なプランが求められた。屋根は1/10の緩やかな勾配として、箱型と家型のあいだのような、明確な記号性を持たない建築を目指した。考慮したのは高さ方向である。階高を3300mmに設定し、各階を1100mm毎に3つに水平分割した、仮想のラインを設定した。外部廊下の手すり、抑えた軒高や開口部で1100mmの水平のラインを作り出し、内部空間はシナ合板の垂れ壁や腰壁、収納棚、幼児用トイレブースやサイン位置にいたるまですべて1100mm毎のラインを基準に整えなおすことで、散逸になりがちな保育園の空間を内外に連続した一体空間として設計した。
Project Date: 2019.01.01
所在地:神奈川県鎌倉市
竣工:2019年
用途:店舗
構造:木造
規模:地上1階
写真高野ユリカ
鎌倉市の寺に隣接する平屋の住宅を改修し、カフェへと転用した。既存の構造体に最小限の耐震補強を施し、室内の環境の特徴を読み取りながら場所に合わせた家具をデザインし、制作した。
Project Date: 2018.12.01
所在地:福島県南相馬市
竣工:2018年12月
用途:集会場・簡易宿所・事務所
構造:鉄骨造
規模:地上2階
敷地面積:415.43㎡
建築面積:156.26㎡
延床面積:280.08㎡
写真太田拓実
福島の原発被災地へ通ううちに、南相馬を拠点に活動する若い地元の人びとと出会った。被災後、被災地の復興支援に集まった多彩な人材のネットワークを生かし、気がつけば震災前より事業を拡大させ、新しい事業を生み出していた。やがて彼らから新しい復興の拠点をつくりたいからそのための小さな建築を設計してほしい、と依頼を受けた。原発事故による強烈な被災経験を乗り越える彼らのバイタリティをかたちにしたいと考えた。
若き日の丹下健三[1913-2005]は広島平和記念資料館[1955]の設計に際して「平和の工場」をつくると宣言した。求められた「資料館」という機能に対して「平和の工場」とはなんとも大げさな気もするが、求められた機能は単なる展示施設でも、目指すべき機能は広島の原子爆弾被災地に日常を再生産するための施設=工場であるという丹下の考えには共感できる。
復興のための小さな建築に求められたのはメイカーズスペース、コワーキングオフィス、ゲストハウスを含む施設で、それはいわば、福島の原子力発電所事故被災地に新たな日常を再生産する「工場」であった。一般的に工場といえば企業の機密を保持するために外部に対して固く閉ざされる場合が多いが、近年ではものづくりのプロセスを発信する装置としてむしろ積極的に外に開く場合も多い。
当初はイベントの開催なども想定して、大きく求心的な空間を想定した。だがやがて理解できたのは、求められた「仕事をする」「宿泊する」「ものをつくる」などの機能を、ひとつの時間の流れのなかに置くことが、よりふさわしいということだった。イベントの開催による外部への発信の仕方もあるだろうが、ここでどのように新しい日常が再生産されるのか、視察に訪れた人びとに建物のなかを案内するような、静かな発信の仕方もあると感じられた。
そこでオフィスには大きな階段状のスペースをつくり、そこでレクチャーを受けた人びとはアトリエを見学し、その後ゲストハウスをめぐり、最後にシェアオフィスにたどり着くひとつながりの動線をつくり「小さな時間の流れ」を設計することが大事だと考えた。「新しい復興の拠点」とは、被災地の新しい日常を支える仕事を生み出す装置=「しごとの工場」であり、「しごとの工場をつくる」ことを通じて復興の様子を発信するためには「しごとの工場」を見学するための「小さな時間の流れ」をつくることが重要であると気がついた。「しごとの工場をどうつくるか」という大きな問いは、「仕事をする」「宿泊する」「ものをつくる」という、「新しい復興の拠点」のためにとりあえず想定された機能をかたちにする過程で、「小さな時間の流れ」をつくるという答えが見えてきた頃に、ようやく浮かび上がってきた。
Project Date: 2018.09.30
写真Nacása and Partners
「G Chair」の試みを以下の手順で発展させたいと考えた。まず上位9か国語で各3タイプ、合計27タイプを3Dモデル化し、プロポーションをパラメトリックに変化させて画像データのセットをつくる。それを機械言語で深層学習させて再現する。具体的には画像データからボクセルデータに置き換え、あり得べきボクセルデータを再現する。「Global G Chair」の人間版に対し、機械学習版である。
これによって、これまで自分がやってきたデザイン作業を鏡に映すことを期待した。分析して類型を取り出す作業は今のところ人間のほうが得意なようだ。でもそこから先の、大量のデータをもとに計算によって典型的なかたちを再現する作業は、機械に任せることでより確かな結果を引き出すことができそうだ。
人間がやると、結果の良しあしというよりは、その結果を導いた人間に対する共感の有無が問題になる。共感が可能にしていたこともあるが、阻んでいたこともある。「Global G Chair」も、ユニークな結果を得られたが、言い方によっては皮肉に受け取られてしまう。
でも機械が介在すると、もしかしたらあり得るかもしれないと思えるある種の説得力がある。データと計算が生み出すデザインは共感以外のコミュニケーションを可能にさせるのかもしれない。あるいは「すばる保育園」の屋根が周辺の山々に呼応しているように見えて私たちが笑いを禁じ得なかったように、機械言語によるデザインは新しいタイプのユーモアを生み出すのかもしれない。
Project Date: 2018.09.30
写真Nacása and Partners
これまでの建築の延長で、新しい「ちのかたち」のあり方を模索するため、頭で考えたことと手で考えたことと計算で考えたことがもう少し等価に混ざったような、新しい空間のスタディの仕方を模索している。ここではまず3次元でスタディしたモデルをもとにダンボールをカットし、組み立てる2.7m立方のプロトタイプを設計した。実際に1/1のモックアップを制作してみると、全体が自立できるようにするためには2.7m四方の空間に柱が6本程度必要であることがわかった。コーヒーショップとして使えるようにカフェオーナーらと意見交換を行い、柱の連結方法を変化させて完成させた空間は、小さいが複数の空間が接続したり、切断したり、複雑なつながり方をしていた。この空間を「離散空間 C」と名付けた。
もっと軽量な構造体をつくるため、ダンボールでワッフル状に組み立てるのを止め、厚紙を利用した中空の構造体を作成し、「ちのかたち」の会場を構成したものを「離散空間 G」と名付けた。ここでは7台のモニターや模型類を展示する空間を構成するため、「離散空間 C」をもとにさらに大きな構造体をネットワークして、複雑なつながり方をした空間を設計し、制作した。パーソナルな空間とパブリックな空間の感覚が等価であるような、今後の公共空間のあり方を示唆する空間のモデルをつくろうとしている。
Project Date: 2018.09.07
Project Date: 2018.04.01
所在地:福岡県小郡市
竣工:2018年3月
用途:保育園
構造:壁式鉄筋コンクリート
規模:地上1階
最高の高さ:6,760mm
敷地面積:5,718.42㎡
建築面積:1,281.88㎡
延床面積:1,203.43㎡
写真太田拓実
クライアントはプロジェクトが始まる直前に起きた熊本での震災を経て、子どもたちを守りたいとの思いから強さのある建築を希望された。またこの保育園では体育教育に力を入れており、3歳未満児(0、1、2歳)と3歳以上児(3、4、5歳)では身体の発達に大きく差があることから、園舎を大きく2つの部分に分けることが求められた。
敷地を訪れると西隣には神社の鎮守の森が隣接しており、北東方向には水田が広がると同時に遠く花立山とそれに連なる山並みを望むことができた。これらの周辺環境と園舎をいかに関係付けるかを考慮する必要があると考えた。
それぞれの保育室用にふたつの園庭をつくり、ひとつは鎮守の森に、もうひとつは南側の水田に向け、それぞれの園庭を囲うように園舎を大きくカーブさせ配置した。室内外の子どもたちの動きを見渡せる結節点に職員室を含めた管理諸室を、角にステージの付いたホールを配置すると、結果的に変則的なS字のカーブの平面となった。
屋根の構造についてはいくつかの可能性を検討した。台風時の雨の吹き込みを考慮して軒を2m出すこと、音楽の演奏や屋内での運動に用いるホール部分はステージ上で高さ4mの高さを確保することなど、場所ごとに異なる要求があった。最終的に鉄筋コンクリートの平板が同じ180mmの厚さで軒先から園舎の屋根へ連続し、そのまま3次元曲面によってスラブが隆起することでホールの屋根とする連続的な形式となった。自由曲面屋根の形態は、ひずみエネルギー最小化を目的とする最適化設計により形態が決定され、天井高4m、横15mのスパンの空間を無柱・無梁で覆い、壁と屋根を一体の構造とすることができた。
ホールの内側から見ると水平に切り取られた連窓からは遠景の山並みを近くに感じることができる。外側から見ると盛り上がった屋根の形状と、遠くに見える花立山の形状が重なって見え、アルゴリズミック・デザインによる機械言語による形態と、自然の形態がぴったりと重なり、連続した風景となっている。子どもの成長に寄り添い、豊かな自然環境と一体となる「連続体としての建築」が実現できたと感じた。
Project Date: 2018.03.31
所在地:埼玉県鶴ヶ島市
竣工:2018年3月
用途:自治会館、コミュニティレストラン、事務所
構造:鉄骨造
規模:地上1階
最高の高さ:4,680mm
敷地面積:977.01㎡
建築面積:326.00㎡
延床面積:321.34.㎡
写真太田拓実
東京郊外の埼玉県鶴ヶ島市の住宅地に立つコミュニティ施設である。自治会館の建て替えに際し、国の補助金(地域創生拠点整備交付金)を活用して「交流サロン」や「地域包括支援センター」などの新しい機能を加え、地元住民による支え合い協議会が管理運営を担う地域の経営拠点として計画された。
前面の道路からみて手前側にコミュニティ・レストラン、支え合い協議会のオフィス、地域包括支援センターなど日常的に人がいる場所を、奥側に稼働していない時間帯も多い集会室や倉庫などを配置した。多くの機能を横断するように長い水平窓を配し、一定の勾配で連続する屋根を架けることで全体を一体的につなぐことを考えた。
雁行しながら連続する窓においては、コーナーで内外からの視界を遮らないように100mm角の柱とトラス梁で構成されるラーメン構造が採用された。屋根は金属折板が用いられ、4mピッチで架けられた梁は可動間仕切りの欄間として機能する。
最も苦心したのはキッチンの配置である。キッチンをコミュニティのコアとして機能させるため、飲食店の営業許可が取れるように準備し、交流サロンと隣接させ、外からも見えるようにコーナーに配置した結果、とあるNPOからコミュニティレストランを運営したいとの申し出があり、現在では毎日ランチが提供され、地域の方々が気楽に集まる場所となった。
Project Date: 2017.07.01
所在地:埼玉県比企郡鳩山町
期間:2017年7月-
鳩山町コミュニティ・マルシェは埼玉県比企郡鳩山町への移住推進と企業支援を目的とした公共施設です。
Project Date: 2017.05.01
所在地:埼玉県さいたま市
竣工:2017年4月
用途:テラス,コミュニティサイクルポート,公衆トイレ
構造:鉄骨造
規模:地上1階
最高の高さ:7,441mm
敷地面積:240.61㎡
建築面積:173.00㎡
延床面積:179.25㎡
写真太田拓実
さいたま市の大宮駅前に市が所有する土地があり、従前から要望のあった公衆トイレを建て替えようという話が出た。その際、大宮では東京オリンピック・パラリンピックなどの国際イベントが開催されることから「おもてなし機能」を強化するという目標が立てられた。具体的に何をもって「おもてなし」とするかは地元と対話しながら定めてほしいという条件のもと、私は設計者として選ばれた。
アンケートではきれいなトイレを望む声が多く、Wi-Fiが欲しいという声も聴かれた。他方でパブリックミーティングではまちの商業との関連で意見が多く交わされた。交通結節点である大宮は不動産価値は高いものの、賃料が高いためにナショナルチェーンの店舗が多く、新しい商業事業者が育っていない。だから、この土地は、事業者の育成のために使うべきだというものだった。道路や広場公園などの公共空間を積極的に開放することで新しい商業プレイヤーを育て、まちを活性化する。そのことがまちの「おもてなし機能」を高める。そんな今日のパブリックスペースの考え方に呼応する建築をつくりたいと考えた。
トイレのために確保された予算をやりくりして、全体を「ストリートのようなひとつながりの連続体」として実現したいと考えた。1階のトイレや駐輪場、屋上のテラスを緩く変化のあるふたつの階段でつなげる。トイレから階段、テラスにかけて設置する手すりや壁を、場所によって透過させたい、目隠ししたい、スクリーンを取り付けたい、などの要求条件の違いを反映して素材を切り替えつつ連続的に変化させる。また主要構造部を構成する鉄骨の1次部材は断面を限りなく軽快なサイズとし、ベンチやカウンターの設置される手すりを構成する2次部材はベンチの荷重やスクリーンの風荷重を負担させるため部材の断面を少し大きなものとし、全体が「1.5次部材」で構成されたかのようにして扱う。「連続体としての建築」が、多様な要求と向き合うひとつの構えとなった。
まちづくりの過程に寄り添い、ボトムアップで設計していくことは、計画的で合理的な建築を目指す近代主義が次第に陥ったような硬直性を回避し、ニーズにより柔軟に応えることを実現するかもしれない。しかしそのような近代主義の反省に立ったはずの漸進主義は、やがて場当たり的な対応に陥って、新たな硬直を生む可能性は否定できない。まちづくりの現場でボトムアップの姿勢を貫くためにも、新しい「連続体」の解釈を示していきたいと考えている。
「パリ大学ジュシュー校図書館コンペ案」(設計:OMA, 1992)や「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」(設計:foa, 2002)などを通じて1990年代から2000年代にかけて議論された「連続体」というコンセプトは、ベルリンの壁の崩壊やEU統合による新しい「連続」の機運のなかで生み出されたが、英国離脱やトランプ政権発足という「分断」が加速する現代にこそ、「連続」はメッセージ性を帯びる。
Project Date: 2016.08.04
所在地:埼玉県白岡市
竣工:2016年4月
用途:戸建住宅
構造:木造2階建(SE構法)
規模:5戸(当該街区)/240戸(リフレの杜)
最高の高さ:7,103mm~7,403mm
敷地面積:170.57 ㎡~246.79 ㎡
建築面積:53.00 ㎡~74.25 ㎡
延床面積:96.16 ㎡~131.77 ㎡
写真永井杏奈
画像検索から得られた「G House」のプロトタイプを工事費の見積り金額とともに発表したところ、「建てたい」というデベロッパーが現れた。敷地は東京の都心から電車で1時間ほどのとあるニュータウンの一角だった。30年にもわたる住宅地開発の最終局面で、変型敷地を有効活用したいということだった。
30年間このニュータウンで住宅を売り続けてきたベテラン担当者は、これまで消費者に寄り添うようにしてさまざまなスタイルの住宅を企画してきたが、今の若い世代は何が好みなのかさっぱりわからない、一度これまでやってきたことを考え直したいという。
「何をやったらいいかわからない」ときこそ、設計するに限る。まずは決めることのできそうなところから少しずつかたちに置き換える。まずは敷地面積から5棟のプロトタイプを並べることとし、その後サイズや部屋数を調整し、庭の配置、駐車場の配置、玄関へのアプローチなど検討項目を増やしていった。プロトタイプを生かしながら、独特の庭で敷地の特徴を生かした住宅地が出来上がった。
建築家として屋根、壁、床、天井、窓などの構成の検討を重ねて設計した「家の家」と、画像検索を用いた「白岡ニュータウンの家」を比べてみると、似ていないといえば似ていないが、似ているといえば似ている。要素がある程度共通しているから、違うといえば構造やディテールの繊細さなどであろうか。それらは私たち建築家にとっては重要な違いだが、他方で要素そのものを劇的に変えなければ新しい建築と認識されないかもしれないと危機感も感じた。
Project Date: 2015.05.01
県内外の大学生が中心となってプロジェクトチームを組み、市民や行政、専門家(チューター、ゲストクリティック)の意見を参考にしながら、「おとがわプロジェクト」のまちづくりの提案をまとめていく、短期集中型ワークショップ。学生の意見に対してチューター(講師)が指導し、提案を進化させるチュートリアル、チューターの各専門領域に関してのショートレクチャー、学生が市民や行政、専門家の方々に提案を発表し、意見交換や市民投票を行うパブリックミーティングを経て公開講評会を開催した。
Project Date: 2014.11.27
「(仮称)アーバンデザインセンター大宮」設置に向けた前段階として、民・官・学が一体となり、大宮のまちづくりを行うためのコミュニティ・ステーションである。まちづくりに関わる意見交換会、イベントや情報発信等を行う。
Project Date: 2014.09.24
Project Date: 2014.09.16
Project Date: 2014.07.19
Project Date: 2014.06.01
所在地:東京都目黒区
竣工:2014年6月
用途:共同住宅
構造:鉄筋コンクリート造
規模:地上3階
最高の高さ:7,705mm
敷地面積:70.16㎡
建築面積:36.30㎡
延床面積:122.52㎡
写真太田拓実
当初は箱に窓、というパタンで設計を始めたが、バルコニーの腰壁として現れる幅1mのコンクリートの帯を全体に拡大してはどうかと思い始めた。柱と梁を幅1mのコンクリートの帯のグリッドに吸収させる。断面は上下方向に3分割、平面は奥行方向に3分割。それだけでできている。本体としての箱と付属物としてのバルコニーというヒエラルキーもなく、窓という記号を使わずに、全体を「帯のグリッド」として設計できたと感じた。
「BUILDING K」から4つの住宅(「ビルの家」「倉庫の家」「小屋の家」「家の家」)までは建築の全体を記号の塊としてとらえるのに精一杯であった。3つのアパートメントの習作を経て、建築を記号体から連続体へ取り戻せたという感触を得た。
Project Date: 2014.03.01
所在地:埼玉県鶴ケ島市
竣工:2014年3月
用途:環境教育施設
構造:木造
規模:地上1階
最高の高さ:6,560mm
敷地面積:499.00㎡
建築面積:127.82㎡
延床面積:127.82㎡
写真太田拓実、東洋大学ソーシャルデザインスタジオ
「鶴ヶ島プロジェクト」が盛り上がっていた頃、ちょうど隣の敷地で別のプロジェクトが進んでいた。工場跡地のブラウンフィールドに太陽光パネルを並べ、発電所にする計画である。2011年3月の東日本大震災のあとで原子力発電に依存したこれまでの日本のエネルギー政策が見直され、太陽光発電所が注目されていた。郊外の工場跡地には住宅需要も少ないため、太陽光発電所の設置にはぴったりであった。ただし、住宅地にそんな大きな太陽光発電所をつくってもいいのか、疑問視する声もあった。
Project Date: 2013.11.04
期間:2013.10.18 - 11.4
写真加藤孝司
東京都心に位置する巨大開発プロジェクト
「東京ミッドタウン」のオープンスペースに設置された
イベント用のインスタレーションである。
貨物用の木製パレットを用い、
マンハッタン・グリッドをテーマとして、
中央の広場(セントラルパーク)を
中心に4 つの公園を用意し、
仮想の都市を表現した。
Project Date: 2013.08.10
期間:2013.8.10-10.27
写真菊山義浩
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で展開された
フィクショナルなデザイン・プロジェクトである。
道州制の導入を想定し、異なる設計コンセプトを持つ
2つのチーム(H,M) が中京都庁舎と東海州庁舎の設計を行う。
来場者がそれらを比較し、最後に投票を行う。
開票作業は毎日行われ、
設計者らはそれらの結果を見ながら、さらに案を発展させる。
設計は展示会場にて完全公開で行われ、
チーフ以外のメンバーは 2 週間毎に入れ替わる。
8 週間で 4,000 票を超える票が集められた。
Project Date: 2013.06.01
Project Date: 2013.05.22
さいたま市大宮区の地元住民の協力を得て5 回にわたる「パブリック・ミーティング」が開催され、模型による比較と投票行為による評価を用いて設計案を漸進的に進化させるアーバンデザインの実験を行なった。
Project Date: 2013.03.01
所在地:東京都目黒区
竣工:2013年3月
用途:共同住宅
構造:鉄筋コンクリート造
規模:地上3階
最高の高さ:7,420mm
敷地面積:99.18㎡
建築面積:68.93㎡
延床面積:182.60㎡
写真太田拓実
引き続き、大きな「箱」に「穴」という仮定で設計を始めた。箱を箱として強調するようにバルコニーを北側に設置し、窓を両端に寄せた。バルコニーの腰壁の高さを窓台の高さ(FL+400mm)に合わせて低くし、家具が置けるように少し出幅を大きく(w=1200mm)すると、バルコニーにしてはプロポーションが横長になった。北側の立面を見ると、バルコニーの陰影が深く、腰壁として現れる幅1mのコンクリートの帯の連続が特徴的である。
慣習的なプロポーションは多少崩せたものの、まだバルコニーはバルコニーのかたちのまま残っており、メインの箱とサブのバルコニー、という対比は残っていた。もう少しメインとサブのヒエラルキーをなくしたいと感じた。
Project Date: 2013.02.08
Project Date: 2012.11.01
所在地:東京都
竣工:2012年11月
用途:住宅
構造:木造
規模:地上2階
最高の高さ:6,480mm
敷地面積:48.90㎡
建築面積:48.90㎡
延床面積:84.27㎡
写真太田拓実
少し特殊な条件での設計が続いていたところへ、比較的オーソドックスな条件で住宅の設計を依頼された。畑として使われていた東京郊外の土地が開発され、新しい住宅群が一斉に建設されようとしていた。今回は都心部のように3階建て以上が前提ではなく、平坦な住宅地の一角、しかも角地だった。ついに木造2階建ての、「普通の」住宅に取り組めそうな敷地に出合うことができた。
いつものように、四角いヴォリュームを置くところから検討を始めた。庭を取りたいと考え、小さな突起を出した。検討を続けた結果、今回はいつものように他律的に解くのではなく、少し自律的に解いてみようと思った。メインヴォリュームの寸法は敷地境界線から追いかけた数値ではなく、6,000mm四方の正方形とした。そこに6,000mmの長さのサブヴォリュームを接続した。1階のリビングと外部の庭が、まったく同じ大きさになった。2階は4分割して3,000mmの部屋をふたつと水回りを置いた。
正面をどちらに取るべきか検討した結果、妻面を西側に向けることにした。緩い勾配屋根を載せた妻面に据えられた窓は、掃き出し窓(1階で出入りにも使われる窓)のプロポーションで2階の中央の、梁がきそうな位置に据えられた。北側と南側の立面の2階には軒にピッタリと付いた、梁を横断しそうな位置に開口がある。
木造2階建て、勾配屋根、吹付け塗装。周りに建っている住宅と構成要素はまったく同じである。だが、配列が慣習的なものとちょっとだけ違うようにつくられた住宅である。しかしそのささいなズレが生み出す自由さが全体に満ちていると感じた。ロバート・ヴェンチューリが「母の家」で取り組んだテーマの現代版。そして日本版、あるいは東京郊外版である。
「ビル」「倉庫」「小屋」ときて、この家は何だろうと考えた。「家の家」としか呼びようのない住宅に見えた。慣習を読み解き、「家」を構成する要素を丁寧に与え直した、「批判的な家(critical house)」である。今後、日本の郊外住宅地で住宅を設計するための、ひとつのプロトタイプを設計できたような気がした。
Project Date: 2012.07.17
Project Date: 2012.07.17
Project Date: 2012.07.01
Project Date: 2012.04.11
2012
鶴ヶ島市に現存する鶴ヶ島第二小学校 ( 約 6,400 m² ) と Tsurugashima Project それに隣接する南公民館 ( 約 2,000 m² ) を複合化し、
管理部門の共有や多目的化によって
面積を 75% 程度に圧縮し、 同時に新しい教育の実践や多様な市民活動、 およびそれらの交流など今日的な課題にも応える
「郊外都市のコミュニティコア」を 提示するというものである。
2013
埼玉県鶴ヶ島の工場跡地に計画された 太陽光発電所のための小さな環境教育施設である 5 回のパブリックミーティングによる 地域住民の投票行為をもとに設計された
当初は 10 案からスタートし、 途中で駅舎型、教会型、路地型の
3 案にカテゴライズされ、最後に1案に統合された
Project Date: 2011.10.01
所在地:神奈川県横須賀市
竣工:2011年10月
用途:住宅
構造:木造在来工法、鉄筋コンクリート造
規模:地上2階
最高の高さ:6,318mm
敷地面積:156.12㎡
建築面積:61.54㎡
延床面積:97.06㎡
写真太田拓実
東京郊外の海沿いの崖地に住宅を建てたいというクライアントが現れた。西南側に大きく開け、海が見渡せる絶好の土地だった。東京都心部の建て込んだ場所と違って、のびのびと検討ができそうだと感じた。ところがいざ検討を始めてみると、さまざまな制約があった。急な傾斜地、かつ地下水が心配な土地である。また背面の住宅の眺望への配慮から、できるだけ高さを抑えることも求められた。
厳しい制約に対して最大値を取るように設計を行うと、制約のありようを可視化したような、他律的な住宅になる。制約から離れた自律的な建築はかたちが明快だが、コンテクストから離れてしまう。自律的であり他律的でもあるような現れ方を私なりに求めていた。
あまり高さも取れないなら、1階は土留めを兼ねたコンクリートの基壇にガレージとベッドルームを収め、2階部分に木造の小屋を載せることにした。緩い勾配屋根を掛け、鉄骨の細い柱で中心を支え、フルハイトの開口を西南側に設けた。2階の間仕切りは途中までとし、小屋の上部に換気扇を設け、下から上への空気の流れをつくろうとした。
海側は寄棟、山側は切り妻で、両者でまったく異なる表情をもっているのがいいと思った。妻面はもう少し高さが稼げたらより「家」らしいかたちになるのだが、ここでは我慢するしかなかった。基壇の上に建つ小屋のような表情をしていたから「小屋の家」と名付けた。山側から見ると山小屋のようであり、海側から見ると海小屋のようでもある。
Project Date: 2011.04.01
所在地:神奈川県
竣工:2011年4月
用途:住宅
構造:鉄骨造、鉄筋コンクリート造
規模:地下1階、地上2階
最高の高さ:7,865mm
敷地面積:57.82㎡
建築面積:31.60㎡
延床面積:56.26㎡
写真太田拓実
日本では土地の所有者が死亡すると、遺族らが相続する際に多額の税金を支払わなければならない。そのために土地を手放さなければならなくなることが多い。したがって東京の住宅地ではしばしば、住宅1軒が建つ土地がふたつ、3つに分割されて売りに出され、同じような住宅が2、3軒建てられ、販売される。
クライアントから示されたのは、そんな東京の住宅地で典型的な、手前と奥に2分割された小さな土地だった。自動車を置くとほとんど空間が残っていない。1階はガレージで奥に玄関と水回り、2階にリビング、3階にベッドルームというのがこの類の住宅の定番である。が、定番どおりに住み方が決められてしまうのは避けたい。
突破口になったのは地盤の条件だった。支持層が絶妙な深さにあった。もし地上部を鉄骨で軽くし、地下に部屋を設けると杭を用いずに辛うじて届きそうな深さ。地下に部屋を設けるのはコストがかかるが、地上3階建てを地下1階地上2階建てにして杭を省略できるならばバランスがとれる。地上部は3階分の高さ制限のもとで地上2階にできれば、高さ方向に1.5倍の余裕が生まれることになる。
通常は車の高さギリギリに設けるガレージの高さを大きく取った。ガレージはエントランスホールのような、大きく明るい空間になった。周囲は建て込んでいるから窓は慎重に開けなければならない。慎重に、慎重にと窓を減らしているうちに窓はどんどん少なくなり、正面に窓のない家になった。地下室の光庭から吹き抜けを介して屋根のトップライトまで、室内に大きな煙突のような空間をとったところ、室内を大きく空気が流れることとなった。
設計を終えて眺めてみると、壁面が大きく、窓が少なく、ガレージとともに大きな庇のある、倉庫のような家だった。そこで私は「倉庫の家」と名付けた。クライアントは出版関係の仕事をしている方だったので、「倉庫は私にとってなじみがあります」と言って気に入ってくれた。
Project Date: 2011.02.01
所在地:東京都目黒区
竣工:2011年2月
用途:共同住宅
構造:鉄筋コンクリート造
規模:地上5階
最高の高さ:12,750mm
敷地面積:102.80㎡
建築面積:60.93㎡
延床面積:302.23㎡
写真太田拓実
小さなアパートの設計に際し、屋根、壁、床、天井、窓などの記号を使わないで設計することを試みた。できるだけピュアなコンクリートの箱を用意し、開口を「窓」として設計するのではなく、「穴」として設計する、というように。これまで幾多の建築家が試みてきたことで、特段珍しいことではないかもしれないが、記号の戯れに慣れてしまった自分にとってはとても大事な訓練だった。
均等に空けられた開口をよく眺めると、1階の開口がゴミを保管する倉庫と重なってしまっていることに気がついた。そこでゴミ箱を避けるように開口を動かした。そのことをきっかけにして他の開口との関係が調整され、独特のゆらぎをもつ全体が出来あがっていった。
箱を箱として扱う、という目標がバルコニーを北側に置くというアイデアにつながった。都心部では洗濯物を外に干さないことが多い。そこで階段側の玄関を開けたらいったん外部バルコニーに入り、そこから部屋に入るという平面を設定した。玄関に鍵を掛けていてもバルコニーに向けて建具を開けておけるので南北に風が通り抜ける。
断面に関するアイデアとしては、限られた建物の高さを均等に割るのではなく、階高を50mmずつ変えて、より明るい上の階は高さを絞り、そのぶんより暗くなる下の階に、より多くの高さを配る設定とし、積層することの意味を各部屋に取り込もうとした。
Project Date: 2011.01.01
Project Date: 2011.01.01
Project Date: 2011.01.01
Project Date: 2011.01.01
Project Date: 2011.01.01
Project Date: 2011.01.01
Project Date: 2010.01.01
「生成の世代」をきっかけに生まれた
現代美術との接点から、
美術と建築という枠組みで更新を続ける
ウェブマガジンのプロジェクト。
「アジア・グローバルシティ」特集など、
建築家やアーティストの活動を
社会との関係から位置づけていく試みである。
Project Date: 2010.01.01
Project Date: 2010.01.01
Project Date: 2010.01.01
Project Date: 2009.09.01
所在地:東京都千代田区
竣工:2009年9月
用途:オフィス
構造:鉄骨造、SRC造
規模:地下1階、地上9階
最高の高さ:37,720mm
敷地面積:216.08㎡
建築面積:122.27㎡
延床面積:992.30㎡
写真樋口兼一
東京都内の高級住宅街の一角に建設された
サービス・オフィスである。
基準階を、ロフトの設置されたメインフロア、
天井の高い透明なエクストラ・スペース、
ユーティリティの3 つに分け、
3 つのタワーにまとめた。
Project Date: 2009.03.01
所在地:神奈川県川崎市
竣工:2009年3月
用途:住宅
構造:木造在来工法
規模:地上3階
最高の高さ:9,095mm
敷地面積:65.39㎡
建築面積:32.77㎡
延床面積:96.83㎡
写真樋口兼一
「BUILDING K」が完成して実際になかで過ごしてみると、設備スペースに面した小さな点検口の地窓(床面に近い窓)を開け、高窓を開けるときに空気が大きく動き、気持ち良く過ごせることに気がついた。そこでもっと空気の動きを手がかりにした住宅を設計してみたいと思った。
住宅設計の相談があり、クライアントから示されたのは、東京郊外の住宅地にある、道路が約120度で交わっている交差点に面した角地だった。当初は大きなヴォリュームを敷地のかたちに合わせて変形させていた。やがてヴォリュームをふたつに分け、それぞれの角度を道路の交わる角度に合わせて配置した。当初は片方が大きく、片方が小さかったが、それらがメイン/サブの主従関係に見えたので、それをなくしていくようにしていくと、ふたつのペンシル・ビルが並んだような住宅になった。
北側のV字の庭に給気のための地窓を集約した。北側で冷やされた空気はそこから入り、東西に大きく開けられた高窓へ抜けていく。南側の隙間に換気扇を集約させると、空気の流れが建築の配置ときれいに一致する。当初は無秩序だった開口の配列に秩序が生まれていく。北側の庭は「給気口の庭」と名付けた。
住宅を「ビル」として設計するというフィクションはいささか、奇妙である。振り返ると、設計プロセスの最初に想像されるものが設計をリードすることはないが、途中で想像されるものが設計の後半をリードする。当初はシンプルな箱型のヴォリュームからスタートしたが、途中までは「家」らしく勾配屋根を載せてみたこともあった。でもそれはやはり不自然だと思えて、やがてペンシル・ビルが出合ったかのようなかたちに収束した。そのかたちは住宅地の風景にも、空気の流れと一致させるという機能にも、よりよくなじんでいるように思えた。
Project Date: 2008.05.31
所在地:東京都杉並区
竣工:2008年5月
用途:共同住宅、店舗
構造:鉄骨造
規模:地上6階
最高の高さ:19,788mm
敷地面積:559.38㎡
建築面積:346.02㎡
延床面積:1,611.37㎡
写真鳥村鋼一、ハビエル・カレハス・セビリア
「Shop U」の設計にあたって自らのつくってきた模型を時系列に並べ、全体を振り返ったとき、それらが「ジャンプしない、枝分かれしない、後戻りしない」という原則に貫かれていることに気がついた。そのようにして作成された模型群は、ひとつの単純なヴォリュームが複雑なヴォリュームに至るひとつながりのタイムラインを示し、まるで卵から魚へと至る、生物の孵化過程を見ているかのようだった。
新しいプロジェクトはショップのインテリアよりはるかに大きな規模であった。できるだけ心を開放して、ゼロから建築を設計するとどうなるだろうという気持ちが、頭のなかに思い浮かぶ情景を実現してやろうという気持ちを上回った。
単純なかたちを置く。決められるところから決める。やがて透明なガラスの基壇の上にペンシル・ビル(細長いビル)が並んでいるようなかたちが生まれてきた。構造と設備のエンジニアとのセッションから、生まれていくかたちに次々と意味が与えられていった。
最終的に38個の模型が残った。それらを生み出すプロセスを振り返ると、21項目の条件が設定されてきたことがわかった。要件の定義が固まり、設計のためのパラメータ(媒介変数)が定まるまでのあいだを「検索過程」、設計が定まってから異なるケースごとに形態を比較して最終形を定めるまでのあいだを「比較過程」と呼ぶことにした。
いくつかの傾向があった。例えば21項目の条件は、最初は大きな条件から定め、小さな条件へと向かっていく。小さな条件を先に決めてしまうと可能性が狭くなる。
私は「ジャンプしない、枝分かれしない、後戻りしない」を原則として、とりあえず決まっていることをかたちにして、課題をみつけ解決するという単純なフィードバックを細かく反復するそのデザイン・パターンを「超線形デザインプロセス」と呼ぶことにした。単純な線形でもなく、非線形というほどマジカルでもない。手続きを都度明らかにして、生まれてくる小さなシステム同士の統合を繰り返していくと創発が起こりやすくなる。いつのまにか出発点が遠く感じられるほどに、高くまで登っているようなイメージである。
Project Date: 2008.02.01
vol.5+6: January 19 and 26, 2008 at INAX:GINZA
vol.9: January 31, 2009 at INAX:GINZA
vol.10: February 6, 2010 at INAX:GINZA
vol.11: October 2, 2010 in DESIGNEAST 01
vol.12: September 19, 2011 in SHIN MINATOMURA
vol.13: September 29, 2011 in DESIGNEAST 02
vol.14: December 3, 2011 at LIXIL:GINZA
「ライブ編集」というコンセプトのもと、
会場にて建築家らによるレクチャー+インタビュー、
文字起こし、レイアウトなど、
取材・編集作業をライブ形式で行い、
フリーペーパー『ROUNDABOUT JOURNAL』を
即日発行するというメディア型のイベントである。
観客たちは最後に会場で行われた議論がまとめられた
フリーペーパーを手にし、
メディアの制作プロセスを体験することが出来る。
Project Date: 2007.01.01
専門誌が相次いで休刊するなか、
ブログと雑誌をつなぐ、
新しい世代のための媒体として
創刊したフリーペーパー。
「議論の場を設計する」というコンセプトのもと、
自分たちが本当に議論したいと思うことを
コンテンツとした。
創刊号は「1995年以後の建築」をテーマとし、
あえて世代論を切り口とし、
新しい議論のプラトフォームを作ろうとした。
Project Date: 2007.01.01
Project Date: 2005.12.01
所在地:埼玉県和光市
竣工:2005年12月
用途:店舗
面積:31.70㎡
写真鳥村鋼一
正解に向かって逆算するのではなく、決められていないゴールに向かって探求する過程は楽しいものである。建築家にとって、与えられた面積表をただクリアするように、「するべきこと(what to do)」の定められたプロジェクトに参加させられるほどつまらないものはない。私たちの仕事はデザインのレベルの前に、プランニングのレベルで何を提案するかが重要である。
テーブルウェアのショップを開こうとするクライアントは、当初自らの最初のショップについて具体的なイメージをもっていなかった。私はまずできるだけ単純なヴォリュームを想定した。棚はせいぜい30cmほどの奥行きだろうからそれをぐるっと一周させただけのかたちであった。
クライアントに見せてみると、見渡せるのはいいが、見渡せすぎて入りづらいのではないかと言われた。ならばと思い、空間をいくつかに分ける模型を見せた。すると、空間が分かれすぎて入ってきた人に自然に声を掛けられない、もっと自然な距離をつくりたいと言われた。ならばと左右から突起を出した模型を作って見せたら、いいんじゃない、と言われた。この短いやり取りでちょっとずつ前に進む感じが楽しかった。
プロダクトデザインの領域で思いついたアイデアをかたちにすることを「プロトタイピング」という。軽くプロトタイピングしてクライアントに見せ、反応を見てまた次の模型をつくる。どんどんバージョンをつくっていったら最後に見たことのないかたちが現れた。
左右から突起の出た棚で4つの領域をつくり、一番奥に店員の領域がある。この4つの領域は特価品、和食器、洋食器、高級品とジャンルごとに並べることができる。蛇行する動線は訪れた人が自然と長居することを可能にする。
これらの要件は、本来であれば設計を開始する前に定義されていなければいけないものである。だが新しいプロジェクトの場合、デザインの作業は要件についてリサーチし、定義することから始めなければならない。クライアントとのやり取りに夢中になってデザインを進めていくうちに、その作業は要件のリサーチとデザインが平行しており、どこにたどり着くかわからない経験であることに気がついた。それはとても清々しく、楽しい経験だった。